「決まった枠組みに当てはめる」というイメージもある「教育」に対し、英語のEducationには「内在している資質等を外に引き出す」という意味があります。見えない環境資源への気づきを促すサウンドスケープという言葉にはもともと、このエデュケーション機能が含まれています。それが個々人に向けられた場合は、各人の内に秘められた感性や能力を、また特定の地域や社会に向けられた場合は、そこに内在する環境文化資源等を引き出すことに繋がります。 ここでは、大学で企画・実施したプロジェクト等に加えて、自治体やNPOより依頼を受けて企画・提案したプログラム、担当・参加した主要な事例を紹介します。




●青山学院大学 2008-2024

最初に手がけたのは、サントリーホールを会場にバックステージツアー等を含めた「新入生歓迎レクチャー・コンサート」。2年目は、青山キャンパスをフィールドに、一期生が新入生を引率してキャンパス内の主要な建物を巡り青山学院の歴史とそのスピリットに思いを馳せる遊歩音楽会」を企画実施しました。大学での授業(専門科目)としては「環境美学」「環境芸術論」「都市環境論」「環境デザイン論」を担当。ゼミでは「サウンドスケープ論」「アートとまちづくり」をテーマに「青山キャンパス音名所」「渋谷-表参道フットパス」等のプロジェクトを実施しています。そうしたなかで2015年には、日本音楽学会第66回全国大会実行委員会からの依頼を受け、学院本部礼拝堂を会場としたレクチャーコンサート<青山学院に伝わる3つのオルガン>や、間島記念館で開催された「壮麗と質実:心斎橋大丸と青山学院の建築原画展」に合わせて開催したシンポジウム「ヴォーリズを伝える:意義と課題」を企画し、その実施等を担当しました。


●聖心女子大学 1991-2008

教育学科に所属し、現代社会の多様な教育現場に身を置き、サウンドスケープというテーマを展開する必要性を感じ、その実践の機会を得ました。保育園や幼稚園では「読み聞かせ」から「外遊び」に至るさまざまなシーンで、人間がその原点において自分たちの音の世界を豊かに創造していくかに立ち合いました。一方「学校教育」の現場では、音の世界は「音楽」というコンセプトやその枠組みに組み込まれてしまう。そのため、「万葉集をうたう/歌の現場を訪ねて/私の歌/手作り楽器・私のコンサート」といったプロジェクトを通じて、音楽という活動をその原点に引き戻すことに努めました。さらに「音楽教育」の枠組みを超え、環境教育・体験学習・人間学習(自己・他者理解/異文化コミュニケーション)等の文脈では「キャンパス音名所/曽祖父母(またはシスター)へのインタビュー/広尾「美印」プロジェクト/ブラインドウォーク/ナイトハイク」といったプロジェクトの企画開発とその実施に取り組みました。


●行政・民間・NPO等

最初期のものとしては、池袋コミュニティ・カレッジ<サウンドスケープ・デザイン:音楽と環境との新たなる試み> (1986年4月-6月)があります。また、横浜博覧会への参加を通じて、サウンドスケープをテーマにした「下からのデザイン」推進の必要性を認識したため、世界デザイン博覧会の会場となった名古屋市に対して提案したのが<名古屋音名所プロジェクト>でした。このプロジェクトはその後、練馬区公害対策課による<ねりまを聴く、しずけさ10選>(1990)、さらには環境庁(当時)による<のこしたい日本の音風景100選>といった事業の展開に繋がります。自治に提案した「まち歩き」企画には、杉並区立社会教育センターが杉並区民大学地域系「東京の生活とアメニティ」専門コースとして開催したワークショップ<音で街をみる>(1994)等があります。また、クリエイティブ・アート実行委員会には「指導者養成アドバンスコース」として<音風景探検:広尾サウンドウォーク>(1996)、同委員会と港区(共催者)のためには<新橋:音の風景から町を考える:新橋の過去・現在・未来の音に耳を澄ます>(2006)を、またJIA杉並土曜学校からの依頼を受けて<善福寺池周辺の旧井荻村まち歩き>(2017) 、公益財団法人せたがや文化財団:生活の依頼を受け<日常を見限らない音風景のワークショップ>(2020)等のプロジェクトを企画・実施しています。